私が覚えている限り、私の母はワンピースを1着しか持っていなかった。
シンプルな長袖の千鳥格子のワンピース。
幼稚園の入園日も、小学校の授業参観日も、高校の卒業式も、母はそのワンピースを着ていた。
授業参観日の母
授業参観日。
私は母がその特別なワンピースを着て来てくれていることが嬉しくて、授業中に何度も後ろを振り向いた。
そのたびに、前を向いて!のジェスチャーをして笑ってくれていた。
母は、いつもズボンだった。
パンツとかジーンズとかカッコいいものではなくて、ゆったりとしたズボン。
私も、小学校から中学校まではいつもズボンを履いていた。
中学生になっても私は木に登っていたのだから、ズボンでちょうど良かったのだ。
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掃除好きであること
母は、掃除好きだった。
私はガラクタばかりを溜め込み捨てることができず、いつも子ども部屋を汚していた。片付けが大嫌いな、子どもだった。
今思い返すと、本当にちびまる子ちゃんだった。
「後ででいいじゃん~」と言いながら、ポテチを食べてなかよしを読みふけっていた。
掃除好きの兄と小学校の頃は部屋が同じだったけど、兄は自分ゾーンが綺麗であれば私ゾーンのことについては何も言わなかった(なんとなく兄ゾーンと私ゾーンに部屋が分けられていた)
「片付けられないなら、捨てなさい!」
母が呪文のように、私が家を出る日まで何度も何度も何度も言っていた言葉。
初めての家出をしたときの話し
私が10才くらいのとき、いよいよ母の堪忍袋の緒が切れて私のガラクタをゴミ袋にせっせと捨て始めた。どんなに止めても、母は捨てることを止めてくれない。
「お母さんひどい!もう、家出する!!」
私は、泣きながら家を飛び出した。
ご近所の坂道のてっぺんまで歩いてくると、急にこころ細くなった。
お腹も減ってきた。そのまま家に引き返したのだから、私の初めての家出はたったの20分くらいだった。
「おかえり。」って言ったお母さんの手には、丸々と太ったゴミ袋があった。とても悲しいのに、なぜかスッキリとしたような気持ちにもなっていて。
その日の晩御飯は、私が大好きな母のミートソーススパゲティだった。
母は体現していたけれど、おそらくミニマリストという言葉を知らない。
服や物に一切頓着せず、無駄なモノをほとんど買わない。ささやかな娯楽は時々美味しいものを食べて、映画館へ出かけるくらい。
私が10年ほど前に着なくなった服を、今も大切に着てくれている。
少し前に我が家に遊びに来たときにも、私が10年前くらいのイベントのお手伝いをしてもらったウィンドブレーカーをまだまだ愛用していた。
「だって、なかなかオシャレだよ?あったかいし」と。
私が思春期になって落ち込むことが増えたとき、母は決まって「映画でも観に行こうか」と私を外に連れ出した。母も私も、ミュージカル映画が大好きだった。
私に必要以上にものや服を買い与えない代わりに、いつも食卓には食べ切れないくらいの種類のおかずが並んでいた。なんで、いつもこんなに食べきれないくらいのおかずが並んでいるんだろう?と不思議に思うくらいに。
どのおかずも、すごく美味しかった。
きんぴらごぼうは、なかでも特別だった。今でも私が実家へ帰ると、必ずきんぴらごぼうを作ってくれる。
娘を妊娠してから、私はこの半年で家中のものを捨てた。
3年間手にしていなかったものを捨て終わったら、今度は1年間手にしていなかったものを捨てる作業になった。
長く悩んだ末に、宝物だったロリィタ服も手放した。
金銭的に困ったから、ものを手放したという理由もある。
けど、ものが減った家は、以前よりも風通しが良くなって気持ちが良い。
今は毎日手に触れるもの以外をどう減らしていこうかという作業に変わりつつある。家の中にあるもので、毎日手に触れていないのに鎮座しているものって案外たくさんある。
ものを捨てて減らしてみて、わかったこと。
それは、暮らしが本当にシンプルになったということだった。
ものが無いと、散らかりようがない。
だから、片付ける手間もない。母が言っていたとおりなんだなぁと、私もぱんぱんに太ったゴミ袋を手にしながら思っていた。
暮らしがシンプルになると、目指す方向や考えるべきことに注力できる。
すべて良い方向に向かっているんだから、片付けってホントにすごいんだなとこの1年間で体感している。
https://koharunokirakira.com/biyori/2018/12/10/issyonimaewomukukoto/
*人生がときめく片づけの魔法/近藤麻理恵
部屋のなかがちょっと散らかってきたな・・と思ったら何度も「人生がときめく~」を読み直している。
貧乏性なもので、本当になんでもかんでも取っておきたくなってしまうタチなのだ。
だけど、今この家のなかで「ものを捨てるのは私しかいない」から、(旦那さんもなんでもかんでもとっておくタチだし、子どもが2人になると驚くほどものが増える)ときどき大きなゴミ袋を片手に、せっせと家の中のものを仕分ける。
いつの日か、大切な夢が叶う日まで
いつか、この本を手放す日が来るまで
このバイブルを何度でも読み返そうと思う