徒然コラム

永遠のニワトリ。

8+

 

 

僕の卵は金色。

僕は、永遠に生きるニワトリ。

 

 

僕たちがすむのは、ひろいひろい地平線が続いている牧場。

育ててくれているおじいは、よく僕たちをこの牧場に放してくれる。

ふかふかの緑のじゅうたんはやっぱり、気持ちがいいんだ。

 

 

ニワおが、気持ちよく走る僕のとなりに並んで

「お前はいいよな。死ぬことが怖くないんだものな」

って言う。

「そんなことあるもんか。永遠に生き続けるんだぞ」

僕は返す。

「でも、死ぬことを考えなくてもいいって、らくちんじゃないか」

「そうかなぁ・・・」

 

おじいがごはんの時間の鐘を鳴らす。

僕たちは急いで小屋に戻って、美味しいごはんをいただくんだ。

やっぱり、おじいが用意してくれるごはんは美味しい。

 

 

「ねえ」

にわ美が僕に話しかける。

「ずうっと生きるってどんな気持ちなの?」

僕は食べるのをちょっとやめて、考える。

「考えたこともなかったよ。だって、今日はごはんが美味しいし、ただ楽しい毎日が続いてゆくだけさ」

「それってしあわせなことなの?」

「どうかな。僕はもう281年生きているけど、今日はしあわせだよ」

「ふうん」

にわ美は、満足したのかまた、ごはんを食べ始めた。

 

 

ぼくだって、考えないわけじゃないんだ。

友達がじゅんぐりに亡くなっていくのはやっぱり寂しい。

みんな口をそろえて言うんだ。

「たまには思い出してくれよな」って。

だから、ときどきぼくはみんなを思い出す。

 

でも、思うんだ。

誰かは、ぼくのことを思い出してくれるの?って。

誰も、思い出してくれなかったら?って。

そう思うと、ときどきさびしくなるんだ。

 

 

たくさん走り回ってみんなと遊んだら、もう空が夕焼け色に染まっていた。

牧場の草が真っ赤に染まって、とても綺麗な時間。

おじいが

「お前ら、たくさん遊んだからよく眠るんだぞ」って声をかけてくれた。

「うん。おじい、いつもありがとう」

僕は、答えるんだ。

 

 

うとうと眠くなったころに、隣でにわ子が泣きはじめた。

「どうしたっていうんだ?」

「明日には、私の卵が持ってゆかれちゃうの」

「そいつはさびしいことだよな」

「まだ、お別れなんてできないのに」

「でも、おれたちニワトリの運命じゃないか」

「わかってるわ。でも、まだほんとは一緒にいたいのよ」

 

ぼくはそれ以上言葉がかけられなかった。

みんなには運命がある。

それじゃあ、ぼくには?

ぼくには、金の卵を産む運命がある。おじいだってすごく喜んでくれる。

立派なさだめじゃないか。

あとは?あとは・・・・・

そこまで考えたら、こてんと眠りについてしまった。

 

 

次の日も、やっぱりぼくたちニワトリの1日はそんなに変わらない。

ぼくは今の生活がすきだし

ときどき「なんでぼくはずっと生き続けてるんだ?」なんて考えながら

緑のじゅうたんを走り回るんだ。

 

 

金色の卵を産むぼくと、みんなの変わらないこと。

今日を生きて一緒に走ってること。

これは、変わらないんだ。

おじいの周りを喜んでかけまわってることだって、変わらない。

 

 

「長生きなんてするもんじゃねぇ」っておじいはときどき言うけど

長生きだっていいもんだよってぼくは返す。

だって、ぼくは、今日しあわせだもの。

 

 

 

*****

あとがき。

このちいさな物語はオルメさん@Orme_alquimistaとのTwitterでのやりとりのなかで「永遠のニワトリ」というワードが出てきて

「物語を書きたくなるワードですね」って話したら

「幸せでほっこりする物語がいいです」とのことだったので、書いたものです。

なんだか、おもしろいなァと思いながら一気に書きました。

 

うん、やっぱり創作は、楽しい!(*’▽’)

小春でした!

雨ふらし。 空は灰色。 水色の傘のうえから ぽつぽつと雨音が聴こえる。 傘をはずして 真上をみる 粒は線に...
 

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