私の実家の近くには、昔ながらの小さな本屋さんがあった。
匂い付き消しゴムやロケット鉛筆などの小学生向けの文房具もたくさん置かれていて、お小遣いが無い日でも私はその本屋さんへ行くのが好きだった。
その本屋さんへ行って立ち読みしていて、少し経つと、本屋のおじちゃんは必ず私の近くに来てセキ払いをしながらその近くの本の入れ替えをゴソゴソ始める。
私のすぐ側で立ち読みしているお兄さんの側にも立って、本をひっきりなしに入れ替えている。
いつもちょっと不機嫌そうな顔だけど、『なかよし』を買う日は『ありがとうね』って笑いかけてくれた。
お小遣い日には、『なかよし』をその本屋さんで買って、友達といつもの場所で落ち合う。友達の愛読書は『りぼん』だ。
近所の駄菓子屋さんへ
近所の駄菓子屋さんへ行って、もう既に残りわずかなお小遣いの中からきなこ飴とにんじん(お米がパフになった駄菓子)を買う。
ブタ麺が本当は好きだけど、また駄菓子屋さんへ来てお菓子を買いたいからこの日は我慢する。
私と友達には気に入りの木があって、2人の愛読書と駄菓子を手提げに入れて肩へ引っ掛けたら、木に登る。
木の上で私は楽しみにしていたセーラームーンの続きを読む。
友達は、赤ずきんチャチャのファンだ。
駄菓子を食べながら、あれやこれや話をする。漫画の感想やちょっと気になる男の子の話、学校のこと。
駄菓子はすぐに食べ終わってしまうんだけど、木の上でずっと話しながら太陽が沈んでいくのを、いつも見ていた。
今はもう、その本屋さんも駄菓子屋さんも無くなってしまった。
駄菓子屋さんのおばあちゃんは、私達がヤケドしないようにポットのお湯をいつも少しぬるめに作ってくれていた。
きな粉飴が当たると、おばあちゃんも一緒になって喜んでくれた。
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*今も、本屋さんで・・・
カラフルな背表紙がずらーーっと並んでいるのを見るとワクワクする。当てずっぽうで小説コーナーから知らない筆者の小説を抜き取って1ページ目だけを読む。
続きを読みたいと思えば買うし、ちょっと違ったと思えば、棚に戻す。目当ての本を買うのも楽しいけど、そんな本の選び方も楽しい。
もう大きなショッピングモールでしかないけど、駄菓子屋さんコーナーがあるのは嬉しい。
うまい棒のめんたい味とコーンポタージュは必ずカゴに入れる。
いつの日か、あの本屋さんや駄菓子屋さんみたいに
『本』も『駄菓子』も、無くなってしまう日が来るんだろうか。
それはとても寂しすぎるから、私は今も、本と駄菓子を買う。
娘がもう少し大きくなったら、一緒に『なかよし』を読もう。
今は、何が連載されてるんだろう?