3000文字チャレンジ

旅 3000文字チャレンジ

5+

 

 

さぁ、旅に出よう。

小ぶりなトランクに荷物を詰め込む。

 

 

今日は一人旅だから、荷物は最低限。

ジーンズは明日も同じもので良いから

替えの下着とTシャツと日焼け止め、フェイスタオルくらいがあれば良い。

化粧は、いらない。

 

トラベラーズノートと、少しばかりの筆記用具も入れていこう。

あ。この日のために読むのをとっておいた、とっておきのミステリー小説も忘れちゃいけない。

 

 

さぁ、出発。

家を出ると、もう夜になっていた。

まだ昼間の暑さを残しているから、熱気が身体にまとわりついて、すぐに汗ばむのがわかった。

 

 

最寄駅から電車に乗り込み、都心へ向かうがらがらの車内に目をやる。

この時間から都心へ向かう人は少ない。

窓の外に目をやると、流れ星みたいにヒュンヒュンと家の光が流れている。

 

スマホを開いて、Twitterから読みたかった3000文字チャレンジの記事にのんびりと目を通す。

じっくりと読みこめたら

感想のリプを贈る。

 

 

 

東京駅に到着した。

嬉しくて、少し小走りになる。

 

ホームへ入る前に

これから乗り込む電車には車内販売が無いから

サッポロ生ビールの黒ラベルの350ml缶1本と

ポッキーとおーいお茶。

幕の内弁当・次の日の朝に食べるおにぎりを買い込む。

お弁当は、玉子焼きが入っていれば何でも良い。

 

 

ホームの先頭に立って、静かに出発時刻の22時を待つ。

思ひでぽろぽろみたいだ、とちょっと思う。

タエ子ちゃんは果たして、トシオさんとうまくいったんだろうか・・・?

 

 

ちなみに、本日のメインイベントは、サンライズ瀬戸・出雲285系に乗ることだ。

到着駅は出雲市だが、目的地はほとんど決めていない。出雲大社へは行こうと思っているが、あとは何をしよう・・・?

乗車日の1カ月前から切符は購入できるため、「みどりの窓口」に並んで買っておいた。

 

 

サンライズ出雲の寝台には、いくつかの種類がある。

シングルデラックス・シングルツイン・シングル・ソロ・サンライズツイン・ノビノビ座席。

今回予約したのは、シングルデラックス。

個室の中でも、最も贅沢な部屋だ。きっと、再び乗るのはうんと先になるだろうから、奮発してしまった。

 

 

 

さて。どの角度でカメラを構えれば良いか、イメージしながら何度もファインダーを覗く。

と、

2つの小さな光が遥か彼方に、見えた。

ぐんぐん近付いて来る。

 

肉眼でしっかりと焼き付けておきたい気持ちと、写真に収めたい気持ちがせめぎ合って

手元がおぼつかなくなる。

 

 

 

結局、気が付いたらカメラを下ろしていた。

 

ぐんぐん近付いてくるサンライズ出雲は

想像していたよりも、ずっと大きくって

目の前にして、思わず頰が緩む。

眼前に迫っているサンライズ出雲の顔を、気が済むまでいろんな角度から写真に収める。

 

 

発車時間が近づいてきたから、急いで車内へ乗り込む。

切符を確認しながら、自分の部屋を探す。

暗証番号式にロックするタイプの部屋のようだ。

荷物を置いて、部屋をぐるりと見渡す。

思っていたよりも、かなり広々としている。

 

部屋に鍵をかけて、まずはシャワーカードを購入しに行こう。シャワーカードが数量限定なことは、あらかじめ勉強していた。

なるべくゆっくりと歩きながら、車内をぐるりと見て回った。

 

 

 

部屋に戻ってきて少し落ち着いたら、お腹が減ってきた。

おーいお茶と幕の内弁当を取り出す。

ぼんやり、車窓を眺めながらお弁当を食べる。玉子焼きが甘くて、美味しい。

 

 

お弁当を食べたら、ビールとポッキーを勢い良く開けて、ベッドに足を伸ばして楽しみにしていたミステリー小説を読み始める。

 

たぶん、今考えられるなかの一番の贅沢だと思う。

ポリポリポリ・・パリポリポリポリポリポリ・・・・・・

ポッキーはやっぱり、冷えていた方が美味しいなと思いながらミステリー小説を読み進める。

 

 

ふと

せっかくだから、ミニラウンジへ出てみようかと思い立つ。

 

 

ミニラウンジでは、サラリーマンらしい人や高齢のご夫婦がゆったりと座っていた。

ミニラウンジのすみっこの椅子に座る。

読みかけのミステリー小説を、続きから読み始める。

 

 

 

物語が佳境へ入ったところで、周りががらんとして誰も居ないことに気づく。

時計の針は、深夜2時を回っていた。

夢中になりすぎてしまったみたいだ。

シャワーを浴びに行こう。

 

シャワールームが空いていたことにほっとしながら、急いでシャワーを浴びる。

化粧はしていないから、備え付けのシャンプーやボディシャンプーで、ザブザブと髪も顔も一緒くたに洗い流した。

シャワーは6分間しか使えないから、時間が足りないかもしれないと思っていたけれど

案外、十分な時間だった。

 

 

 

髪をフェイスタオルで拭きながら、部屋へと引き返す。

どすんとベッドに腰かけて、残っていたぬるいビールを飲み干す。

 

横になって、身体をうーんと伸ばしてみる。

心地よい電車の振動が身体に伝わってくる。

少し、眠くなってきた。

外は真っ暗。たぶん、3時くらいになっているだろう。

 

 

目をつぶった。

電車の揺れが、心地良い・・・

また、いつか、今度は一緒に乗れると良いな・・・

 

 

 

 

「おい、明るくなってきたぞ」

あら?

1人旅じゃなかったっけ・・・?

 

 

起き切らない頭のままうっすら目を開くと

隣では、髪を整えた旦那さんが、窓の外に目をやっている。

 

 

そうだ。

結婚30周年だからと奮発して、サンライズ出雲に乗っていたんだっけ。

すっかりシルバーグレーの髪になった旦那さんの頭に目をやる。

窓の外はすっかり白み始めて、朝日が昇ってくるところだった。

 

 

身体を起こす。

少しだけ、肩や腰に痛みが走る。

 

「なんだか、1人旅に出ている夢を見ていたんですよ」

「ああ・・・そういえば、子ども達が小さな頃に1度だけあったな」

「そうでしたっけ?」

 

「書き置きで、『サンライズ出雲に乗ってくる』とだけ書いてあった。もう、戻って来ないかもしれないと、あの時は思ったよ」

「そんなわけ、ないじゃないですか」

「あの時は、ひどい喧嘩をしたからな」

「そうでしたっけ?」

「お前は最近、忘れっぽいな」

「お互い様じゃないですか」

 

思わず、くすくす笑う。

簡単に身だしなみを整えると、自分もすっかり髪の毛がシルバーグレーになっていることに気付く。手も、かさかさしわしわだ。

 

おかしい。と思って、やっぱりくすくす笑ってしまった。

先日、「おばあちゃんの手、なんでしわしわなの?」って孫に言われて思わず笑っちゃったばかりなのに。

 

 

 

朝食はミニラウンジで食べようと旦那さんから提案があったので、おにぎりを持ってミニラウンジへ向かうことにした。

まだ、朝の5時。

誰もいないかと思っていたけれど、朝日を見るためか思っていたよりもミニラウンジは賑わっていた。

 

 

「新婚旅行みたいですね」

「新婚旅行か・・・そういえば、行ってなかったな」

一緒に、のんびりおにぎりを食べる。

 

そういえば、私が1人で乗ったときには一体何を食べたのかしら?

サンライズ出雲に乗って、一体どこへ行ったのかしら?

もう、思い出せない。

 

 

ミニラウンジに集まった人達のにぎやかな声に包まれながら、眩しい朝日を見ていた。

そうか、これは、いつか見たいと思っていた景色だ。

 

「そろそろ部屋に戻ろう」

「そうですね」

席を立って、ミニラウンジを後にする。

 

と、ドアを開けると、先日もミニラウンジにいた女性が入ってくるところだった。

眠そうな顔をしている。

あんまり、眠れなかったのかしら?

 

女性が中へ入れるよう身体をよけると

「すみません」と小さな声で、サッと通り抜けて行った。

 

 

 

と、急に頭の中で何かが弾けた。

この香り、すごく覚えている。

何だったかしら・・・?

なぜか、懐かしい。

 

だけど、やっぱり、思い出せない・・・

 

 

 

「おい、行くぞ」

足を止めていた私を呼ぶ声がする。

「はぁい」

もう、本当にせっかちな人だ。

 

 

間も無くサンライズ出雲・瀬戸は、切り離しとなる岡山駅に到着する。

 

 

* * * * *

 

時空も飛び越えて、今一番行きたいところへと旅させてもらいました。

3000文字チャレンジに、感謝です。

 

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