私は子どもを出産して看護師を辞めてから、2年間ほどさまざまな工場の派遣勤務をしていました。
週に1回くらいの勤務だから、月に4〜5回。
なぜ、工場の派遣を選んだのかというと、単純に工場が好きな場所だったからです。
大きな工場から小さな工場まで
すごく、中を見てみたくなるんです。
中にはどんな機械が入っていて、どんなラインになっていて、どんな製品が出来上がるんだろう・・・と。
2年間の間に、本当に色んな工場での派遣を体験できました。
靴下や洋服のピッキング、付録作り、DVDキットの作成、ライン作業、製本作業、精肉の仕分け、冷凍庫内の作業、ケーキ作り、ムック本の付録付けなどなど。
どの体験も私にとっては、本当に体験できて良かったなぁと思うことばかりです。
ちなみに、工場の仕事はブルーカラーと呼ばれますが、これは「青い襟の労働者」という言葉が由来なんだそうです。
ホワイトカラーも知っているけれど、他にも仕事によってカラーがあるのかな?と思って調べてみました。
・ホワイトカラー…オフィスで机に向かって働く仕事(事務職・公務員・プログラマー・ライターなど)
・グリーンカラー…環境保全などに関わる仕事(リサイクル業・植林業など)
・グレーカラー…ホワイトカラーやブルーカラーに分類されない仕事(宿泊業・飲食業など)
調べてみると思っていたよりも、カラーが少ないんですね。
レッドカラーが消防士とかイエローカラーがライフセーバーとかパープルカラーが占い師とか・・・もっと色んな色で職業が分けられたらどうだろう?
話しは戻りまして、ブルーカラーと呼ばれる工場での仕事は単発派遣だと基本的には単純作業を任されます。
8〜10時間、ずーっと単純作業の繰り返し。
かなり辛くて強烈に印象に残ったのが、マイナス20度の冷凍庫内での作業でした。
もちろん、自分から選んだ仕事なので、どんな職場なんだろう?とワクワクしながら向かったわけです。だけど、想像していたよりも50倍は過酷な職場でした。
エスキモーのような上着と長靴を履くよう指示されてマスクをして巨大な冷凍庫内へ入るんですが、5分ほどで身体の奥底まで冷え上がります。15分ほど経った頃には上司から指示をされて返事をしようとしたときに、口が凍って上手く言葉が話せない状態になっていました。
だから、そこでパートで働いている方達は身体に熱が出るように移動はほぼ小走りです。年齢層は見たところ、20代が中心。
30分ほどで身体が限界になり、外で休ませてもらって回復したらまた庫内へ入るを繰り返し、6時間ほどの勤務を終えました。
勤務を終えた頃には、自分の身体が冷凍庫みたいになっていて、外に出てきているはずなのに身体に熱を感じなくなっていて・・・もう、ここの勤務は控えておいた方が良いなと思ったのでした。
冷凍庫内の仕事と同じくらいにハードだったのが、精肉の仕分け作業の工場。
8割くらいがアジア系の海外の方が中心に働かれていて、「オネサン、コッチね!」と片言で指示を頂きながら丸一日豚肉をスーパーに並べるためのパックに詰める作業。
スーパーのお肉ってこうやって詰められているんだなぁ…と思いながらも、とにかく寒さと臭いがかなり厳しい環境に気持ちがちょっと負けてしまっていました。
反対に一番楽しかったのは、クリスマスケーキ作りの工場。
12月23日に一斉募集がかけられ、おそらくは工場に派遣が500人くらいは集められていたんじゃなかろうかと思います。
工場の中は生クリームの甘い幸せな香りで包まれていて、私はホールケーキのイチゴを3個乗せる係りになりました。
向かいの年配の女性も、私と同じくイチゴ係りで、上手に乗せられるようになると流れてくるケーキのスピードはかなり早くなり、あたふたとイチゴを乗せ続けていた1日で。向かいで一緒に乗せていた派遣さんと励まし合いながら、イチゴを乗せるコツをお互いに教えあったりしていました。
失敗したケーキはもらえるのかな?とほんのり期待していたんですが、もれなく廃棄されるということを聞いて、少し肩をがっくりと落としながら帰ったのも懐かしいです。
そんな派遣勤務の中でも、とても好きで長い期間働いたのが、衣類のピッキングの工場と製本工場でした。
どちらの工場も夏の暑さは耐え難く、目の前が霞んでくるような温度まで工場内は蒸しています。
40度近くまで気温が上がるので、なんとか倒れまいと必死で踏ん張りながら段ボールをバラす!バラす!
夏場は勤務の途中に体調不良を訴えて早退する派遣さんも多く、とにかくポカリスエットをこまめにがぶがぶと飲んでいました。
どちらの工場も大きな大きな機械が置かれているんですが、爆音を上げながら動く機械を見ているのがとても好きでした。
大きな機械は、人の手によって長い時間かけて微調整されて、ようやく動き始めます。
機械がグォングォン唸って、仕事開始ーー!と思うと不具合が出て、また微調整。
派遣はボンヤリと社員さん達が慌ただしく機械が直すのを見つめて、動くのを待つばかりなんですが、そうやって社員さん達が工具を器用に操りながら機械をいじるのを見てるのも好きでした。
自分が男だったら、間違いなくブルーカラーの仕事を選んだだろうなぁと思いつつ。
長く働いた2つの工場では、顔を覚えてもらえると段々とパートさんがやるような仕事を任されるようになります。
新しい仕事を教えてもらうのも嬉しくって、はりきって働いていました。
それが一通りできるようになると、今度は初めて来た派遣さんについて仕事内容を教える仕事。
なるほど、こんな風に派遣は働くものなんだなと体感していたのでした。
工場の中の派遣勤務でも、沢山の人達と出会いました。
竹刀を持っていそうな体育会系の男性上司や、優しくいつも話しかけてくれたお母さんみたいな派遣さん。噂好きな派遣さん。
孫に小遣いをやりたいからねって笑って話しながら、一緒に汗流してピッキングしていたおばあちゃんも
できたばかりの彼氏の話しがウキウキと止まらない、大学生の可愛い女の子も
ニッカポッカを履いて見た目はすごく怖そうなのに、親切に仕事を教えてくれたおっちゃんも。
皆んな、元気にしてるかな?って、今も時々思い出しています。
派遣後にお腹が減りすぎて、1ピースだけ買って駅のホームで食べたケンタッキーのチキンが涙出るくらい美味しかったことも。
工場の派遣勤務のなかで大切な友人と出会えたこともまた、私にとっては大きな財産です。
たった1日の単発工場派遣なんだけど、そのたった1日のなかにも毎回ドラマはあって。
暑い・寒い・キツイとか
そんなの全部吹っ飛んでいっちゃうくらい、楽しんでいたなぁと思います。
ライン作業でモタモタしていて、社員さんから檄を飛ばされたこととか
その日の派遣さんで気がつくとちゃんと連携できるようになって
終業間際には、かなりのハイスピードでラインについていけるようになっていたり。
本を扱う工場では、おそらく100kgくらいの紙の束を一日中積み下ろす作業があったんですが、どんな重労働でも派遣に男や女は関係なくって。
「できないなら来るな」という職場なので、とにかく工夫しながらやってみます。
脳外科で看護師として働いていたときに、100kgくらいの体重がある患者さんの車椅子への移乗や入浴介助などを1人でするときもあったんですが、そのときを思い出していました。
大切なのは、ボディメカニクス。
看護学校で1番始めに習う、看護技術の基礎です。
いかに自分の腰や膝などを守りながら、患者さんをケアするか。自分の身体をどう使えば、自分より重い患者さんを楽に移動できるか。
まさか、看護技術が派遣現場で役に立つ日が来ようとは・・・人生何があるのか分かりません。だから、面白いんですねぇ。
また、ときどきは単発で衣類のピッキングやクリスマスケーキ作りの派遣にも行きたいな・・・!と思っています。
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お久しぶりの3000文字チャレンジになりました。
最近テーマに乗り遅れすぎてしまって、あたふたとしてしまっていましたが、また是非のんびりマイペースで参加させてください♪(*’▽’)
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