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以前まで、一番好きなクラシックは?と聞かれれば「英雄ポロネーズ」と答えていた。辻井伸行さんの音楽と出会って、軽く頭をはじかれたみたいな衝撃を受けた。そのときの音楽が、「英雄ポロネーズ」
辻井さんの音楽に出会い、私はピアノクラシックがとても好きになった。それで、「さあ、集中するぞ」という仕事の始まりのタイミングでクラシックを流す。
ピアノのクラシックでは、弾く人の感情だけではなくて、その曲を生み出した作曲家の意識が伝わってくるような気がする。
ベートーヴェンの悲愴
でも、今はペートーヴェンの「悲愴」がとても好きだ。
「悲愴」は、ベートーヴェンが耳が聞こえなくなった時期に作られた音楽。でも、タイトルのように救いようのない悲しさではなく、曲全体の印象は丸くて柔らかくて温かい。
私には、なぜか「悲愴」が希望に溢れた音楽にも聞こえる。
だから、ほんとうに仕事をするときの一曲目は大体、「悲愴」なのだ。状況は「悲愴」だったかもしれないけれど、ベートーヴェンの心はちゃんと明るい方を向いていた。そんな景色が目に浮かぶような音なのだ。
だから、私はこの音楽から「どんなに悲愴な状況でも、明るい方向を向くんだよ」というメッセージを受け取っている。何百年経っても、うんと遠くの誰かへメッセージを届けられるんだから、音楽って本当にすごいなとしみじみ思う。
年を重ねるごとに、ピアノクラシックが好きになるのは、なぜなんだろう?
ピアノクラシックを聴いていると、心の中が海の中みたいになる。
つぶつぶと小さな気泡が弾けるのがわかる。
日々はとても賑やかだから、時折つぶつぶと気泡を吐き出すだけの魚になりたくなるのだ、きっと。
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